婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
お義母さまと分かれ、智明が運転する車に揺られながらボーッと窓の外を見る。

いつもと変わらない風景なはずなのに、今日は少しだけ親子連れや妊婦さんに目がいく。

私もこの子が生まれたら、あんな風に智明と3人で街を歩きたいななんて、ぼんやり考える。

「窓の外ばっかり見てどうした? 具合悪い?」

「ううん、元気だよ。自分が妊娠してるからなのか、親子連れとか妊婦さんにばっかり目がいくなと思って」

「こうして眺めて見ると、意外といるよな。普段はただ何となく通り過ぎてるから、分からないけどさ」

ぼんやりとそんな話をしていると、智明が近くにあった有料駐車場に車を停めた。

何かあったのかとハラハラしていると、智明が言ったのは私の考えていたこととは全く見当違いなことで。

「蛍の体調が良ければ、ここに車を停めて少し散歩しないか? 体調が悪ければ、このまま帰るし」

「少しだけ、散歩したいかも」

「体調悪くなったら無理しないで言うこと。無理したら怒るからね」

「うん、分かった」

低めにそう脅され、私は首を縦に振るしかなかった。

智明がガチギレしてるのはみたことがないけど、こんなイケメンにキレられたら多分すごい迫力あるだろうし、普通に怖いと思う。

怒らせないようにします、はい⋯。
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