婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
あっちを見たりこっちを見たりしながら街を散策するのは初めてで、すごく楽しい。

いつもは素通りしているから、初めて発見するお店も少なくなかった。

「疲れてない? 大丈夫?」

「大丈夫だよ。智明は大丈夫?」

「俺は全然大丈夫だよ」

「その割には、肩で息してない? 気のせい?」

「気のせいだよ。まぁ、ちょっとだけ足がダルいような気もするけど、大丈夫」

「じゃあさ、あそこの公園のベンチで休憩しようよ」

「ナイスアイデアだね。賛成」

若干肩で息をしている智明と共に公園のベンチに座り、フッと息を吐き出す。

この辺全然歩くことないから、こんなところに公園があるなんてことも今日初めて知った。

「なんか、遊具とか小さく感じるな」

「うん、昔は私たちもあの大きさの遊具じゃ大きかったのにね」

「俺なんか、あっという間に30越えてたぞ」

「私も、4年後には30か⋯早いなぁ⋯」

公園を眺めながら、そっと自分のお腹に手を当てる。

この子はどんな子に育つのだろうか。

目の前にいる子供たちみたいに元気で外で遊び回るのか、それとも家で本を読んだりパズルをしたり、大人しい子に育つのか。

生まれてくるのはまだまだ先なのに、そんなことばかり考えてしまう。
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