婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
次の日。

私は朝から高峰親子の喧嘩を見ております。

昨日私が眠っている間に、お義父さまが放った一言が原因らしく━━━━━━━。

「この子の名前は私が付けよう。智明のネーミングセンスは昔から壊滅的だからな、変な名前を付けそうで不安だ」

「父さんだけずるいよ、そこは俺でしょ。いっそのこと、俺の子ってことにしよっか」

「名前を付けるのは、当然だが親である俺と蛍だ。父さんと光明じゃない」

「蛍さんの意見はもちろん尊重して付けるさ」

「右に同じく。だって兄さん、昔飼ってた犬に"いぬ"って名前付けてたじゃん」

「うるさい、あれは間違いだ。とにかく、名付けの権利は2人にはない」

というわけらしく(私は寝てたから知らないけど)、朝からやんややんやと揉めているのだとか。

てか、犬に"いぬ"って智明適当すぎでしょ。

そりゃ、お義父さまも光明くんも不安になるわ。

息子に、"むすこ"なんて名前付けられたら、たまったもんじゃないから。ほんとに。

「蛍は俺の味方だよな? 俺たち親なんだから、
一緒に考えてくれるよな?」

「うん、考えるけどね智明。犬に"いぬ"はないでしょ…」

そう言ってケラケラ笑うと、智明は完全に拗ねてしまって。

あ、しまったと思った時には遅かった。
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