婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
「2人とも、そんなに落ち込んだ顔をしてどうしたの?」

「名前が…決まらないのよ。智明に負けないくらい、私もネーミングセンスなくて…」

「あら、どんな名前を考えていたの?」

「あまりにもネーミングセンスゼロで、太郎とか一郎にしようかって話してたとこ…」

「太郎とか一郎だって素敵じゃない。今どきっぽいかって聞かれたら、微妙だけど…」

お母さんがお見舞いに来てくれて、3人で頭をひねらせる。

ベビーベッドで眠る赤ちゃんの顔を見ると、かっこいい名前付けてあげたいなと思うけど親がポンコツなせいで、まともな名前が浮かんでこない。

赤ちゃんの顔は智明にめっちゃ似てて、目はくりくりだし鼻も高いし唇も綺麗だしで、ほんとに赤ちゃんなの?って思うくらい。

私はちんちくりんな顔だから、私に似なくて良かったと心から思う。

智明は私に似てほしかったらしくて、蛍にあんまり似てないって落ち込んでたっけ。

「ねぇ、私から提案してもいい?」

「どうぞどうぞ。いい名前付けるためならどんどん提案して」

「男の子なんだし、智明くんの名前から漢字どっちかお借りしたらいいんじゃない?」

なるほど、その手があったか。

たしかに智明の名前から漢字を1つ取れば、名前も考えやすくなるかもしれない。
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