婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
「というわけで、俺と蛍のネーミングセンスが全くないので、何かいい名前あれば一緒に考えてくれ」

その日の夕方、高峰家のみんなを病室に集めて智明がそう声をかけた。

私の両親は会社でトラブルが起きたとかで、来れなくなったらしい。

あまり大事にならないといいなって、少しだけ心配になる。

「三郎はどうだろうか」

「お父さん、それ本気? 今どきの子はもっと派手な名前じゃないと」

「先に言っておくけど、キラキラネームは全部却下するからな」

「えぇ、少しくらいキラキラしていた方がいいものよ。ただ、当て字はダメよ」

お義母さまが真剣な顔でそう言い、その場はしばし沈黙に包まれる。

色々条件が厳しくなればなるほど、付けるのが大変になるからだ。

「俺と蛍としては、俺の名前から一文字"智"をもらって、名前をつけようと思っていた」

「なるほど、いいんじゃないか?」

「ただ、2文字で付けたいから、1文字で(さとる)はなしで」

「逆に"明"を使うのはダメなのか?」

「そっちの方が簡単な漢字だし、名前も付けやすいと思うわよ」

お義父さまとお義母さまからの提案により、それもありかと考える。

次々いい案は出てるのに名前を決められないなんて、情けないですほんと。恥ずかしい。
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