婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
「ッ…それ、やらぁッ…」

智明の柔らかい唇が私の体に優しくキスを落とす。

その感覚が気持ち良くて、でもちょっぴりくすぐったくて頭の中がおかしくなりそうだった。

「蛍、可愛いよ。もっと顔見せて」

「恥ずかしいから、見ないで……」

「何にも恥ずかしくないよ。だからほら、ちゃんと顔見せて」

ほんとこの人は、どこまでイケメンなんだろう。

智明の顔を見ただけですっごい安心できるし、この人になら体を任せても大丈夫だと心から思える。

久しぶりということもあり、私は全てを智明に委ねてただ快感を貪った。

「蛍、大丈夫?」

「大丈夫なわけないでしょ…」

「ごめんね、無理させすぎた」

「別にいいけど、明日は甘やかしてよね」

「明日は父さんと母さんが明将のこと見てくれるって言うし、2人でどこか出かけようか?」

「え、そうなの?」

「あれ、言ってないっけか。仕事も一段落したし、明将連れて出かけたいんだって」

お義父さまとお義母さまが明将のことを連れてお出かけしてくれるのはいつものことだけど、今回はあまりにもタイミングがいいというか。

まるで私が智明に抱かれて動けなくなるのを知っていたみたいな、そんなタイミングだ。

「まぁとにかく、明日は2人でゆっくりしようね」

「う、うん…」

だんだん微睡んできていた私は、智明への返事もそこそこに眠りについた。
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