婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
私がよく行くお店に行ってワンピースを選ぶことになったから、急いで準備をして家を出た。

「蛍はこの店で服買ってるの?」

「うん、お母さんも私もこのお店は行きつけのお店なの」

「すごくオシャレな店だね」

「でしょ。服もすごい可愛いんだよ」

最近来てなかったし、ワンピースの他にも何着か買おうかな。

どの服も可愛いから、ついつい買いすぎちゃうんだよね。

「蛍、この服可愛いんじゃない?」

「ほんとだ、すごい可愛い。いや待って、先にワンピース選ばなきゃ」

「あのワンピースいいんじゃない?」

「私に似合うかな?」

「着てみなよ」

「うん、試着してくるね」

店員さんに言って試着室に入ろうとしたら、なぜか智明がついてきた。

「外で待ってていいよ?」

「なんで?」

「いや、だって、恥ずかしいし⋯」

「朝裸見たから、下着姿くらい大丈夫だよ」

「そんなこと言うのやめようね!?」

試着室のすぐ外に店員さんが待機してるっていうのに、なんてこと言ってんだ。

仲がいい夫婦って捉えられればいいけど、変態夫婦なんて捉えられたら二度と買い物に来れなくなる。

「いいからほら、早く試着してみなよ」

「向こう向いてて」

「はいはい、向こう向いてます」

「こっち見たら殴るからね」

そう忠告してから服を脱いだのに、鏡越しに智明と目が合って思いっきりぶん殴った。
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