婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
「ありがとうございました〜!」

店員さんの元気な挨拶に見送られ、店を出ると私も智明にお礼を言った。

「いっぱい服買ってくれてありがとう」

「これくらい気にしないで。蛍オシャレ好きだし、また来ようね」

こういうことサラッとやっちゃうから、イケメンなんだよなぁ。

服くらい1人で買いに行けよじゃなくて、一緒に来てくれるってところがポイント高いよね。

って、私はイケメン評論家か。

「ここから車で少しかかるから、寝ててもいいよ」

「起きてるから大丈夫だよ。運転任せてごめんね」

「いいよ、ゆっくりしてな」

車内にブランケットとか飲み物とか完備してあるし、ほんとすごいの一言に尽きる。

「蛍、緊張してる?」

「緊張してないよ」

「嘘つき、ガチガチじゃん」

「なんで緊張してるか考えてみてよ」

「そんなに緊張しなくても平気だって」

「智明だって、うちのお父さんに会う時緊張したでしょ」

「全然緊張しなかったよ。商談の方がよっぽど緊張するからね」

そうだ、こういう人だよこの人は。

私は事務仕事メインの仕事だし、公の場に行くのはお父さんのパーティーの付き添いくらいだし。

私より全然場数が違う智明からしたら、結婚挨拶くらいなんてことないんだろうな。
< 21 / 146 >

この作品をシェア

pagetop