婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
「よし、着いたよ」

やばい、遂に到着してしまった。

まず初めましてって言って、それから自己紹介して。

何話すか車の中で考えてたのに、全部飛んじゃったよ。

「ただいま」

「お邪魔します!」

「いらっしゃい! よく来たわね!」

「さぁ、中に入りなさい。今日は少し肌寒いからね」

お義父さまとお義母さまはすごく歓迎してくれて、少しだけ緊張ほぐれたかな。

「蛍さん、長旅お疲れ様!」

「ありがとうございます! これ、少しですが⋯」

「わざわざ気をつかってもらってすまないね。ありがたく、頂きます」

「智明、そんなとこに突っ立ってないで座りなさい」

「これ、俺から。結婚関係のバタバタで父さんに仕事変わってもらってるし」

「そんなこと気にしなくていいんだよ。私も結婚する時、父に色々お願いしたんだから」

「はい、仕事の話はそこまでよ。蛍さん、お昼ご飯何がいい?」

「私はなんでも⋯」

「クリームシチュー」

「え、昨日も食べたよね」

「クリームシチューは、智明の大好物なのよ」

「そうだったんですね⋯」

お義母さまがそう言うと、智明はバツが悪そうに顔を逸らした。

多分、私に好きな物バラされたのが恥ずかしかったんだろうな。

でも、クリームシチュー好きなんて可愛いとこあるじゃん。
< 22 / 146 >

この作品をシェア

pagetop