婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
「智明、電話鳴ってる」

「いいよ、後で出れば」

全てを投げ出し、私たちはお互いを求め合っていた。

毎日のように求められているはずなのに、もっと智明が欲しいと身体が疼く。

「ごめん、無理させた」

「それは全然大丈夫だけど⋯」

「はい、水飲みな」

「ありがとう⋯!」

智明から水を受け取って飲み、ふとさっき電話が来ていたことを思い出す。

「ねぇ、さっきの電話折り返さなくて大丈夫なの?」

「実家からだから、もうちょっとしたらでいいよ」

「何か急用なんじゃない?」

「多分結婚式のことだと思う。会場決めたのか、とかそういう」

智明の実家は大手製薬企業だし、招待する人も絶対多いよね。

私もお父さんとお母さんから招待客リスト渡されたし、あとで智明と相談しなきゃ。

「結婚式まで日数ないし忙しくなるね」

「まぁ、なんとかなるでしょ。最悪招待状出すの秘書に頼むし」

「秘書さんいるんだ⋯」

「うん、いるよ。結構なおじいさんだけど、仕事は完璧」

「へぇ、そうなんだ。じゃあ、秘書さんも結婚式招待しないとね」

「いいよ、恥ずかしい」

「結構長い付き合いなの?」

「元は父さんの秘書だったから、ガキの頃から職場に行けば会ってたんだよ」

それで、招待するのが恥ずかしいってわけね。

小さい頃からお知り合いなら、色々知られてるだろうし顔赤くして話してるのが可愛い。
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