婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
「というわけで、今から光明と待ち合わせするから」

「了解です」

「はぁ、蛍のこと会わせたくない。切実に」

「大丈夫だよ、私は智明一筋だから」

「へぇ、嬉しいこと言ってくれんじゃん」

改めて口に出すのは恥ずかしいけど、私だって言う時はちゃんと言うんだからね。

「兄さん、蛍。昨日ぶり」

「お前なぁ、仕事は大丈夫なのかよ」

「大体片付いてるんで、後は帰国して報告書書くだけ。帰国は兄さんたちに合わせた」

「なんで合わせんだよ⋯」

「その方が色々都合良かったんだよ。実家帰ったら、お見合いさせられるだけだし」

「まさかと思うけど、新婚旅行についてくる気か?」

「大丈夫、ある程度の距離は取るから」

「そういう問題じゃないだろ⋯」

光明くんは光明くんなりに、色々あるんだな。

智明がお見合い結婚じゃなくて、私と普通に結婚してるのが不思議なくらいだ。

「あ、そうだ。兄さんと蛍に相談したいことあったんだ」

「どうしたんだよ?」

「実は、この出張で仲良くなった女性から告白されて⋯」

「マジか、お前」

「すごく綺麗な人なんだけど、父さんと母さんに反対されそうで怖くて」

「その辺なら大丈夫だろ。通訳なら俺らですればいいし」

「すごいね、光明くん⋯」

昨日分かれてから数時間、その間にまさか告白されていたなんて。

光明くんもなかなかやるな。
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