婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。

時には話し合いも必要です

「蛍から言いたいこと言っていいよ。朝は普通だったのに、何かあった?」

「さっき私と電話した時、誰といたの?」

「営業部の中村といた。今月の営業成績が思ったより奮わなくて、方針とか見直ししてんだよ」

「“智明”って下の名前で呼ばれてたけど、中村さんとは親しい仲なの?」

「中村は俺の大学時代の同期だよ。ずっとうちの会社に務めてくれてるんだ」

「そうだったんだ」

大学時代から一緒の人なら、下の名前で呼んでも全然不思議じゃないよね。

「智明は中村さんのこと下の名前で呼んだりしないの?」

「俺は基本的に名字だな。女性を下の名前で呼ぶのは、大切な人だけって決めてるから」

そう言って、智明は私に向かって微笑みかけた。

智明にとっての大切な人が私なのかはまだ微妙だけど。

「俺の大切な人は蛍だけだよ。女性を下の名前で呼んでいるのは蛍だけだ」

「やっぱり智明はエスパーだ」

「蛍の顔に書いてあることについて、返事しただけだよ」

「中村さんと浮気してるのかと思った」

「失礼だな。こう見えても、俺は蛍一筋なんだけど?」

「ふふっ、ありがとう」

智明はイケメンだしスタイルもいいし、女性が放っておくわけがない。

色んな女性にアプローチされてるんだろうけど、私一筋だと言ってくれて嬉しかった。
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