婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
智明 side

蛍が店を飛び出してすぐ追い掛けたが、もう蛍の姿はどこにも見えなかった。

足が早いと聞いていたが、こんなに早いなんて思わないだろ。

「智明、私と結婚してよ。ずっとあなたのことが大好きなのよ。どうして私じゃダメなの?」

「まず自分の行動振り返ってみろよ。時と場合を考えず、あんな発言する奴と結婚なんかできるかよ」

「蛍さんだって似たようなものじゃない。智明に構って欲しくてお店を飛び出したのよ? どうしてそれを見抜けないの?」

「うるせぇよ。それに、適当なこと言ってんな。俺がお前を抱いたことなんか1回もねぇだろ」

「たしかにそれは嘘よね? けど、私が言うことと智明が言うこと、みんなはどっちを信じるかな?」

「みんなって、誰に何を言いふらすつもりなんだよ」

「えー、それ教えたら意味ないじゃん?」

「はぁ、そっちがその気ならこっちもそれなりの手段取らせてもらうけどいいのね?」

「何それ脅し? てか、そんなのに私が怯むとでも思ってるの?」

この女、俺が本気で手を回したらどうなるか想像できないのかな?

中村はまだ何かごちゃごちゃと喋っていたが、それを振り払って蛍を探すために駆け出した。
< 63 / 146 >

この作品をシェア

pagetop