婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
次の日、予定通り私たちはランチを食べに来ていた。

今までは一緒にランチをするなんてことがなかったから、少し新鮮な気がする。

「お待たせ、待った?」

「全然、私も今来たところだよ」

「先に頼んでても良かったのに、待っててくれたんだ?」

「せっかくだし、一緒に頼んだ方がいいかなと思って」

私が気になっていたのは、自宅のすぐ近くにあるカフェ。

そのカフェはコーヒーはもちろん、パスタが絶品らしく、常に店内は多くの人で賑わっていた。

「何頼むか決めた?」

「私は、店長のオススメって書いてあるミートソースにしようかな」

「じゃあ俺もそれにする。せっかくだし、オススメ食べてみよう」

ミートソースを2つ注文し、他愛もない話に花を咲かせる。

「蛍、俺のこと本当に許してくれた?」

「何のこと?」

「何ってほら、この間のことだよ」

「大丈夫、もうちゃんと許してるし仲直りしたつもりだよ。すごく怒ってたわけじゃないから、許したっていうのもおかしいけど」

「ありがとう。それから、もう1つ話したいことがあるんだけど」

「なぁに?」

「今度、一緒に旅行に行かないか? 最近バタバタしてたし、ゆっくり温泉にでも浸かりたくてね」

「温泉いいね! 私も行きたい!」

無類の温泉好きである私は、智明の提案にすぐさま乗った。

たしかに最近忙しかったし、たまにはいいよね。
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