婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
「うん、心拍も確認できるね。今ちょうど6週目頃だと思います、おめでとうございます」

「ちゃんといるんですね⋯」

「小さいのに、ちゃんと生きてる⋯」

「高峰さんは何か持病はありますか?」

「いえ、特にはないです。ただ、元々生理痛は重い方でした」

「わかりました。それでは、定期検診の案内をしますので、待合室の方にお戻りください」

「ありがとうございました」

ドキドキの診察も無事に終わり、待合室でホッと胸を撫で下ろす。

「このまま何事もなく生まれてきてくれたらいいな」

「うん、元気に産まれてきたらそれでいいよ。早く会いたいなぁ」

「蛍に似るといいな。俺には似てほしくない」

「え、私は智明に似てほしいのに」

「俺に似たって、何もいいことないよ。仕事人間になるだけだ」

「それもまた魅力でしょ。あんまり仕事人間だと困るけど、少しならいいんじゃない?」

「今の、光明が聞いたら泣いて喜ぶぞ」

でも、私から見たら智明の方が光明くんよりも仕事人間って感じするけどな。

智明は何に関しても抜け目がなくてちょっと取っ付きにくいところもあるけど、光明くんはどちらかというとホワホワしていて、話しかけやすいもん。
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