"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
今日一日分の手書きの伝票をまとめていると厨房から唐揚げ弁当を手渡される。そこにはオマケとして弁当の上に丸型のプラスチック容器に入っているサラダが乗っていた。

「お待たせ致しました。唐揚げ弁当です。スタンプカードが貯まりましたので、次回お使い下さい。それから、いつも来て下さるのでサラダをオマケに入れときますね」

「ありがとうございます。野菜不足なので嬉しいです」

彼は嬉しそうに受け取って、弁当屋を去っていった。

彼が出た後に椅子をみると、文庫本を忘れていってしまったことに気付く。今届ければ間に合うような気がして、店を慌てて飛び出す。

「よ、良かった、間に合って。コレ、忘れてましたよ!」

咄嗟のことで上着も着ずに走って来たのだが、外は冷え込んでいて吐いた息が白い。

「あ、お弁当屋さんの……。わざわざありがとうございます」

彼に文庫本を差し出すと、私に向かって微笑みながら受け取る。一瞬の出来事だったが、その微笑みを見て胸が高まってしまった。鼓動が跳ね上がり、もう少しだけ彼に近付いてみたくなった。
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