"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
りりちゃんと私は同じ境遇に近い。仕方なく我慢したつもりでも、本当は悔しかった。大人になっても大学に行きたかったのだと引きずってしまうのは良くない。抑えていた負の感情が出てしまった時、どうしようもなく自分がちっぽけな存在に感じてしまうから。

「りりちゃんの気持ちが凄くよく分かるよ。私もね、父が事故にあってしまい、大学進学を諦めたの。頭の中ではこれで良かったんだ、と理解したつもりでも後悔はずっと残っていた。決して父を恨んでる訳でもないんだけど、進学してたら違った人生もあったのかなって……ふと思い出して考えてしまうから」

私の話を聞いたりりちゃんは、目尻に涙を溜めていて指で拭っている。私はりりちゃんの力になりたいと思い、連絡先を交換した。スイーツを食べたながら歓談し、カフェを出た後のりりちゃんは胸の内を樋口さんに聞いて貰えてスッキリしたようだった。

「ひぐっちゃん、めぐみちゃん、今日はありがとう。デートの邪魔してごめんね。ひぐっちゃん、また部活で会おうね! 大好きだよー!」

樋口さんと二人でりりちゃんを駅の改札口まで見送る。りりちゃんはもしかして、樋口さんの事が好きなのかな? それとも先生としての大好き? 樋口さんは親身になって聞いてくれるから、格好良くてこんなに親切な先生が居たら私も好きになってたかもしれないな。
< 24 / 53 >

この作品をシェア

pagetop