"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
「平日は毎日、あの時間に来てくれますが……残業ですか?」

「残業の時もありますが、そうじゃない時もあります。私、実は高校の教員をやってまして……」

高校の教員? なのに何故、こんなに身なりに気を遣わないのかが失礼ながらも気になる。

「何の先生ですか?」

「美術です。花鈴高校の樋口秋吾(ひぐちしゅうご)と言います」

「美術の先生でしたか……。 しかも花鈴高校は私の母校です。懐かしいなぁ」

樋口さんか。常連さんなのに名前も知らずに過ごしていたので、知ることが出来て良かった。あくまでも常連客として、……だけれども。

樋口さんが勤めている花鈴高校(はなすずこうこう)は私の母校でもあるから、知らず知らずのうちに親近感が湧いてくる。
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