"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
──秋吾さんの仕事終わりにデートをしたり、自宅に夕飯を食べに来るのが日常化している毎日。そんな、ある日の事。

「萌実さん、今週末は学校の予定が何もないのです」

「そうなんですね。秋吾さんが良ければ、土日のどちらもお会いしたいです」

「ズルいとは思いつつ、萌実さんならそう言ってくれるだろうと思ってました」

週半ばの水曜日。いつものように仕事帰りに夕飯を食べに来た秋吾さん。食器の後片付けを手伝ってくれながら、私に話を振ってきた。

私達の仲を邪魔しない為か、両親は台所や居間から姿を消し、自分達の寝室に既に向かった後だった。

「萌実さんと週末は朝から過ごす事が出来て嬉しいです。やっと願いが叶いました」

「ふふっ、私もですよ」

そんな風にノロケながら、私達は食器の片付けをしている。目があったのだが、お互いに反らしてしまう。

毎週、土曜日は仕事だったが、りりちゃんがバイトに入ってくれているので私は秋吾さんとデートを楽しむ事が出来る。

秋吾さんと付き合って三ヶ月が過ぎた。秋吾さんとはキス以上の関係にはなった事がない。キスもあの時に一度したきり、していない。プラトニックと言えば、それに近い関係である。

キスをする気になれば出来るのだろうけれど、いくら両親公認とはいえ、自宅で目を盗んでするのも抵抗がある。秋吾さんも同じかもしれない。

「萌実さん、これは本当に良かったらで内緒の話なんですが……」

「はい、何でしょうか?」

秋吾さんが私の耳元に唇を近付けて、小さな声で話す。吐息がかかってくすぐったい。

「あの、私の家に来ませんか?」

こそこそ話の内容にドキッとさせられて、私はソワソワしてしまう。初めての男性の自宅。

友達の紹介で男性とお付き合いした事が過去に一度だけある。弁当屋の手伝いがあるので会う時間に限りがあり、愛想を尽かれて自然消滅してしまった。元々、男性が私を気に入ってくれて興味本位でお付き合いしただけで、恋愛感情はなかったので後悔は何もなかった。
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