"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
「はい、是非お邪魔させて下さいね」

私も小声で返事をする。秋吾さんの部屋は想像するに、描き半端のアクリル画があったり、ミステリー小説が沢山、本棚にありそうだ。その他は整理整頓されている、シックでモノトーンの部屋なイメージ。

手土産は何にしようかな? 洋服も新調したいな! などと今からワクワクしてしまう。父親以外の男性の部屋に初めて入るので、緊張もあるけれど好奇心旺盛になる。

少しでも綺麗に見られたいので仕事の合間に女性らしいシフォンワンピースを購入しに行ったり、当日の朝に作る弁当の中身も考えたりしていたら、あっという間に週末になった。

当日、秋吾さんは私を自宅まで迎えに来てくれた。秋吾さんと歩いて、秋吾さんの自宅に行くなんて新鮮で楽しい。

「お弁当作ってくれたんですね。ありがとうございます」

「ピクニック気分で作り過ぎちゃいました」

秋吾さんの左手には私の作ったお弁当のカゴが収められ、右手は私の左手を繋いでいる。
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