"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
翌日、私は秋吾さんの部屋に予定通りにお邪魔する。本屋でお出かけ雑誌を一冊だけ購入し、紅茶を飲みながらページをめくっていく。

「萌実さん、萌実さん! 温泉の貸し切り風呂と高級ホテルのジャクジーはどちらが良いですか?」

思い出したかのように急に話し出す秋吾さん。秋吾さんはテンションが高く、わくわくしているみたいだ。

「温泉かな? ……って、ちょっと待って下さい! 一緒に入ろうとしてますか?」

「だ、駄目ですか?」

「だ、駄目……じゃないですけど」

恥ずかしいので断りを入れようとしたら、子犬みたいに"きゅううん"と悲しげな表情で訴えてきた。こんな顔をされて目の前で訴えられたら、私の胸はドキドキしてしまい断れない。

「じゃあ、温泉にしましょうか!」

秋吾さんはにこにこしながら、雑誌をめくろうとしていた私の手を取り、ぎゅっと握った。

「ん? 決定打って、そこなんですか?」

「お互いにどちらにしようか迷っていたので、それを決めてからの方が良いかな? と思いました。だって、私達の一大イベントなんですからね! 今から緊張しちゃいますね!」

秋吾さんは握っていた私の手を、自分の頬にスリスリしている。
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