"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
彼との旅行
翌週末、私達は予定通りに温泉旅行に来た。樋口さんと新幹線に乗り、東京からは僅か一時間半で行ける有名な観光地。

駅前から温泉地に行く路線バスに乗る。窓の外を眺めると、新緑が光に照らされてキラキラと綺麗。

両親に土日の両方を家を空けることを告げると、ニヤニヤしながらからかわれた。それが、親としての反応かと思うとどうかと思う。

「萌実さん、次で降りますね。萌実さんの言ってたカフェがありますから」

「分かりました。次ですね」

バスの次で降りますスイッチを押そうとしたら、違う誰かが押してしまった。

「あっ、」

普段からバスには乗らなかったので、降りますスイッチを押したかった。誰かに押されてしまった時、子供みたいに声が出てしまう。押したのは前の座席の女性で、私の声に反応してチラリと後ろを見た。

私達は気まづい思いをして、お互いに目を逸らす。

「萌実さん、荷物持ちますね」

目的地のバス停に着き、秋吾さんがカートを持ってくれる。いざ降りようとすると前の座席の女性も一緒に降りるようだった。
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