"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
「こんにちは、お二人もこちらに来る予定だったんですね」

私達に気付いた彼女は気軽に話しかけてくる。彼女は小顔で目がパッチリしていて、細身のモデル体型。スラリとした足を組んで、スマホを操作していた。

「そうなんです。雑誌で見てから、どうしても立ち寄りたくて……」

「そっかぁ。私も同じです。雰囲気良いですよね、ココ」

「えぇ、とても」

私達は彼女の隣の席に座り、メニューを眺める。テラス席は木漏れ日が入り込み、気持ちが良い。

秋吾さんは迷わずオススメのカフェオリジナルのコーヒーをオーダーし、私は紅茶をオーダーした。それから、スコーンとサンドイッチを秋吾さんとシェアする為に一皿ずつ。

彼女はアイスコーヒーにシフォンケーキ。シフォンケーキにそえてある手作りのブルーベリージャムが、適度な酸味と甘みがあって美味しいと言っている。

「私は彼氏に振られちゃって、一人で傷心旅行です。本当はね、彼氏と来るはずが出先に喧嘩しちゃって……一人で来ちゃいました!」

彼女はシフォンケーキをフォークで大きめに掬うと、パクっと豪快に口に放り込んだ。

「そうなんですね……。でも、彼氏さん追って来るかもしれないじゃないですか!」

「そうだと良いけど。来なくても一人で楽しんじゃいますよ!」

バクバクと口に放り込んでいく彼女。喧嘩を思い出して、いても経ってもいられないのかも。

「一人でも楽しめるのは最高に良いことですよね。私も以前は一人でも最高な一日を過ごそうと努力していました。今は萌実さんが居るから幸……ん、んぐっ、」

「しゅ、秋吾さん、サンドイッチいただきましょ!」

私は秋吾さんの口に、届いたばかりのサンドイッチを塞ぐように入れた。危ないところにタイミング良くサンドイッチが届いて一安心。秋吾さんが、彼女に余計なお世話を言うところだったから良かった……。
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