"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
先程会ったばかりだけれど、人懐っこい彼女だからか情に絆され始めている気がする。初の二人きりの旅行なのだから、もっと楽しみたい気はするのだけれど。

彼女はシフォンケーキを食べ終えてしまい、私達と同じサンドイッチをオーダーした。ヤケ食いなのだろうか?

「貴方達はこれから、どちらへ?」

「カフェを出たら、予約してある温泉旅館に向かいます。ここから歩いて行けるみたいなので、散歩がてら歩きます」

「もしかして、ココ?」

彼女は観光地のパンフレットを広げて見せて、カフェから近い温泉旅館を指さした。

「はい、ココです。各部屋に露天風呂も付いているし、お料理も美味しそうだったので速攻決めちゃいました」

「マジかー! 同じだよ、泊まる場所。……もし良かったら、一緒に行っても良い?」

「はい、行先が同じならば一緒に行きましょう」

樋口さんは黙ってコーヒーを飲んでいた。美味し過ぎて陶酔しているらしい。こんな時は自分の世界に入ってしまうので、誰の話も聞いてない。ご満悦の笑みを浮かべて、スコーンも食べている。彼女がオーダーしたシフォンケーキに添えられていたブルーベリージャムが、スコーンにも添えていた。そのブルーベリージャムが秋吾さんの好みに合った為、悶えている。
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