"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
私と奏さんは先に旅館の前まで着いて、秋吾さんを待っていた。

「めぐちゃんって、あの人と居て楽しいの?」

奏さんは悪い人ではないと思うけれど、先程知り合ったばかりの私にストレートに気持ちをぶつけてくる人だ。

「え? 楽しいですよ。秋吾さんは最初は変わってる人だなって思いましたけど……、知れば知る程、一緒に居たいと思うようになっていました」

「ふぅん、そうなんだ。私からは楽しそうには見えないんだけどな。だって、あの人、自分の世界に浸っててめぐちゃんのことなんか知らんぷりじゃん。共通の話題でもあるの?」

奏さんは秋吾さんみたいなタイプは好みではないのか、私にぐいぐい聞いてくる。

「秋吾さんは美術の先生なんです。私も絵を描くのが好きだったので、美術館でデートしたりしますよ」

「美術かぁ……。私は絵を描くのがまるっきり駄目でいつも成績はアヒルさんだった。その代わり、理数系は大好き」

「えー、凄い! 理数系得意な女子って憧れたなぁ」
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