"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
「私なんかが貴方を本当に守れるのかと思ったでしょう? 実は私、こう見えても肉体は鍛えています。肉体美とは何かを追求した所、やはり、細身で程よく筋肉のついた身体はバランスが良いと思います。良く言う、俺って脱いだら凄いぞ、みたいな感じですね」

「はぁ……、そうですか」

何と答えたら正解なのかが分からない。私は相槌を打ち、次の会話を待つ。

「やはり、自分の思う美の極限まで合わせようとすると限界を感じますが、そこまでの過程も楽しいものですよ。価値観は違えど、世の中には美が溢れています。自分だけのお気に入りを見つけるのが私の日々の楽しみなんです」

私を守れるか守れないかの話から肉体美、肉体美からお気に入りの美にまで話が飛んだ。彼から感じ取れる事は、絵画を鑑賞するにしても、ただ美しいや綺麗だという単純な感想ではなく、どこがどう美しいのか、綺麗さとは何かまでを追求している。彼は美術教師なので、そこまで追求するのが当たり前なのか否か。

「それで、最初の話に戻りますが……」

え? 戻るの?

「唐揚げ弁当や絵画だけではなく、川崎さん自身もお気に入りなんですよ。弁当屋で働く看板娘の川崎さんは活き活きしていて、とても美しい」
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