溺愛ハンティング
「ああ、それはネオレゲリアです。最近人気が出てきた植物で、パイナップルの仲間といえばいいかな。原産は南アメリカです」

 ネオレゲリアは鮮やかなピンク色の葉がロゼット状に重なっていて、確かにパイナップルに似ているような気もする。
 大きさもいろいろで、グリーンがかったものや、斑入りのものもあった。

「ほら、ここを見てください。真ん中に水がたまっているでしょ? そこにすごく小さな花が咲いてるでしょ? 可憐な子なんです」 

 並んだ鉢に向ける八木さんの視線は柔らかくて、声も明るく弾んでいた。「子」というのが、ちょっと引っかかったけれど。

「ほんとだ。かわいい! あの、ネオゲリアって手がかかりますか?」
「いえ、そうでもないです。日光によく当ててあげて、こまめに水やりをしてあげれば、元気に育ってくれますよ」

 温室には他にも見たこともない植物がたくさん置かれていた。
 八木さん自身が採取した品種も多いそうで、それらについては特に丁寧に説明してくれた。

 どこの原産で、何の系統なのか。さらに花や葉の特徴とか、どんなふうに生育して、どう扱えばいいのか――さすがに八木さんは何でも知っていて、話もうまい。

 そもそも「これって植物?」と疑いたくなるようなものもあって、イベント自体はけっこうおもしろかった。植物が好きな人なら、きっとすごく楽しめるだろう。
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