溺愛ハンティング
 とはいえ、私自身はそれどころではなかった。

(だから、結局どういう仕事なわけ?)

 ここに来たのは、プラントハンターが何なのか知りたかったからなのに、いまだにそれがよくわからないのだ。
 このままビフォーの状態が把握できなければ、的確なアフターを導き出せるはずがない。

 ただ意外だったのは、八木さんからはあまり軽い感じがしなかったことだ。

 参加者の中にはあからさまにアピールしている人もいたが、彼はみんなに公平に、しかも感じよく対応し、きちんと一線を引いているような気がした。

(いやいやいや、今はそんなことどうでもいいから)

 私は心の中で何度も首を振った。

 どうやら八木さんは最初の印象とは違う人らしいが、肝心なのは彼のキャラではない。もちろんそれだってスタイリングに関係ないとは言えないけれど。

(結局、ふだんは常につなぎ姿ってこと? だったら、フォーマル系を着てもらったら雰囲気が変わるかな)

 とにかく劇的な変身を成功させるために、私はジュースも飲まずに、みんなより頭ひとつ高い背中をひたすら見つめ続けた。
< 13 / 55 >

この作品をシェア

pagetop