溺愛ハンティング
(体型はA体? いや、細身だからY? だけど肩幅と胸囲はけっこうありそうなのに、ウエストは細いかも……うーん、サイズのデータはもらったけど、つなぎだからよくわからないなあ)

 JIS(日本産業規格)で標準とされているスーツサイズを思い浮かべながら、私が首を捻っていた時だ。

「はい、わかばさん」
「えっ?」

 目の前に、ふいに黄色のジュースが入ったグラスが差し出された。それも八木さんの、まばゆい笑顔つきで。

「喉、乾いてるんじゃないかと思って。ここ、けっこう暑いですから」
「あ、は、はい。ありがとうございます」
「どういたしまして」

 とまどいながらグラスを受け取ると、またしても大勢の視線が私に集中する。今度は前よりも鋭さが増したような気がした。

 ――何あれ? ちょっとわざとらしくない? あんなふうに八木さんの気を引くなんて。

 絶対、みんなからそう思われてしまっただろう。
 そんなつもりはまったくないけれど、まさか「誤解ですよ」と弁解するわけにもいかない。

 私は急いでジュースを飲みほし、とにかく八木さんの観察に専念することにした。
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