溺愛ハンティング
ハンドタオルや手帳、ペンケースやタブレット端末の奥からなんとかスマートフォンを見つけ出し、表示された名前を見る。
「あれ、堺さんだ」
堺さんからの電話なら、たぶん例のキャンペーンがらみだろう。
温室の中はかなりざわついていたので、私は急いで外に出た。
『あ、鳴瀬さん。休みなのに連絡しちゃってごめんね』
堺さんの話は予想どおりで、担当する三人と顔合わせする日が決まったという知らせだった。
明後日の午後、みんなそろって高砂屋に来館するという。
『で、コンテストは今月末の日曜に開催することになりました。それと高砂副社長が八木さんの記事が載っている雑誌をくれたので、売場のチーフに渡しておくね。参考にするといいよ、とのことでした。では、健闘を祈ります』
堺さんによると、プラントハンターはメジャーな職業ではないので、副社長が気を遣ってくれたというのだ。
(……まずい)
電話が終わると、私は急に途方に暮れてしまった。あこがれの副社長に心配してもらったが、今はうれしさより焦燥感の方が大きい。
スケジュールが決まったというのに、まだ戦略がまとまっていないのだ。それどころか方向性さえ未定のままだ。
(どうしよう?)
どんよりした一月の空の下、私は肩を落として八木苑の敷地を出た。
「あれ、堺さんだ」
堺さんからの電話なら、たぶん例のキャンペーンがらみだろう。
温室の中はかなりざわついていたので、私は急いで外に出た。
『あ、鳴瀬さん。休みなのに連絡しちゃってごめんね』
堺さんの話は予想どおりで、担当する三人と顔合わせする日が決まったという知らせだった。
明後日の午後、みんなそろって高砂屋に来館するという。
『で、コンテストは今月末の日曜に開催することになりました。それと高砂副社長が八木さんの記事が載っている雑誌をくれたので、売場のチーフに渡しておくね。参考にするといいよ、とのことでした。では、健闘を祈ります』
堺さんによると、プラントハンターはメジャーな職業ではないので、副社長が気を遣ってくれたというのだ。
(……まずい)
電話が終わると、私は急に途方に暮れてしまった。あこがれの副社長に心配してもらったが、今はうれしさより焦燥感の方が大きい。
スケジュールが決まったというのに、まだ戦略がまとまっていないのだ。それどころか方向性さえ未定のままだ。
(どうしよう?)
どんよりした一月の空の下、私は肩を落として八木苑の敷地を出た。