溺愛ハンティング
「うちは花卉卸業なんで、その延長みたいなものです。木でも花でも実ものでも、お客様のご依頼には必ず応えるっていうのが社長のポリシーなので、息子の俺に難しいリクエストが回ってくることが多いんですよ。だからあちこちでいろんな植物を探し歩いていたら、そう呼ばれるようになっちゃって……あ、いや、俺なんかよりもっと有名な方もいますけど」
「どんな依頼でも……必ず応えるんですか?」
「はい!」

 ここは無難に「すごいですね」と返すべきだったかもしれない。それなのに私は、つい「だけど」と続けてしまった。

 力強い返事に納得しかけたものの、ふと昔話の『かぐや姫』のエピソードを思い出してしまったのだ。

 竹から生まれた絶世の美女かぐや姫が、貴公子たちからの求婚を断るため、さまざまな宝物を探させるというものだ。
 たとえばそのひとつ、『蓬莱の玉の枝』は仙人が住む蓬莱山にあるという、銀の根と金の茎、そして白い玉の実がなる枝だった。

 もちろんそんなものが見つかるはずはなく、職人に作らせたのだが、結局嘘はばれてしまう。

「だけど?」
「かぐや姫のお話に出てくる宝の枝、ご存じですか? もし八木さんがあれを頼まれたら、探してくださるんですか?」
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