因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

 太助くんもやはり意外そうに目を丸くしたので、私はクスクス笑った。

 光圀さんのように日常的に節制した生活を送っていると、ちょっと羽目を外しただけで驚かれてしまうようだ。

「ふうん……。じゃ、今和華さんが危険にさらされても、先生は助けられないですね」

 太助くんはそう呟きながら、使ったコップをすすいで、水切り籠にコトッと置いた。

「危険なんて、家にいるのにあるわけないじゃない。地震でも起きたら話は別だけど」
「ありますよ、危険。ここに」

 冗談かと思って笑い飛ばしたのに、太助くんが、私をまっすぐ見つめて断言する。

 ここに危険があるって……この台所?

 ガスの消し忘れでもあるだろうかとキョロキョロしていると、太助くんが一歩私の方へ踏み出し、両手でがしっと肩を掴んできた。

「えっ?」
「こんな隙だらけで、先生の妻がよく務まりますね。……ホント、腹立つ」

 彼はふっと目を細め、傾けた顔を近づけてくる。

 まさか、キスされる……?

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