因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「ありがとうございます。明日から、光圀さんの妻としてしっかり勤めます」
「そう気負う必要はない。家のことは家政婦に任せればいいし、俺の仕事の世話は弟子がしてくれる」
「では、私はなにをすれば?」
家事も仕事もノータッチなのだとしたら、暇を持て余すだけではないだろうか。
実家の店も、結婚後は手伝わなくていいと言われている。
「好きなように過ごしてもらって構わないが……それでは不服か?」
「不服というわけではありませんが、できればなにか仕事を与えていただけると毎日が充実するかなと」
光圀さんは尖った顎に手を当て、難しい顔で思案を始める。
そんなに無理難題を押しつけたわけではないと思うのだけれど……。
遠慮がちに彼を見つめていたら、光圀さんが「そうだ」と呟いた。
「和華、スマートフォンは使えるか?」
「えっ? はい。スマホなら、毎日使っていますけど」
スマホを正式名称で呼ぶ人を、ニュースのアナウンサー以外で初めて見た気がする。
目をぱちくりさせていると、光圀さんが続ける。