因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

 難しい言葉に首を捻りながらも、家訓を読み進める。

 香道は仏教の精神を大切にしているからか、どの家訓もお寺の住職が話してくれる説法のようで、興味深い。

 しばしの間、蔵掃除という本来の目的を忘れて読みふける。

 そして後半のページに差し掛かかって少し経った頃、私はある家訓を目にしてドキッとした。

【家元、醍醐万斎の名跡(みょうせき)は世襲制によってのみ受け継がれる】

 これってつまり、家元を継ぐことができるのは、血の繋がりのある子どもだけってことだよね。

 光圀さんの跡を継いで家元になれるのは、私たちの子どもだけ……。

 醍醐流を途絶えさせないためには、絶対に子どもを産まなきゃならないんだ。光圀さんは全然そんなそぶりを見せないから知らなかった。

 子どもを作るにはまず、夫婦生活をするんだよね。

 光圀さんと一糸まとわぬ姿で……。

 軽く想像しただけなのに、ボン! と火が付いたように顔が熱くなった。

 中学生じゃないんだから……と自分に突っ込むが、なかなか火照りは収まらない。

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