因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「ほら、和華さんはどれ? 早くしないとおばさん達に全部取られちゃうわよ~」
バーゲンのワゴンセールのように殺気立つテーブルの方から、柴田さんが私を呼ぶ。
「ええっと、太助くんのずんだを一本と……みたらしで!」
なんとか団子を確保すると、再び土間に下りる。
伊織さんが湯呑に注いだお茶を人数分お盆に乗せ、入れ替わるように土間から出ていった後、台所に太助くんの皿を置いた。
「ここに置いておくね」
「ありがとうございます。あの」
「うん?」
「いえ。……なんでもありません」
ちらりと家政婦たちの方を見てから、あきらめたようにそう言った太助くん。
話したくても、こんなに騒がしい場では無理ってことかな……。
残念に思いつつ、私もみんなの方に移動してしばしの休息を取るのだった。
休憩の後は、また蔵に戻って書物の整理をした。
暗くなったら終わりにするよう言われているが、床に置かれた本も少なくなり作業の終わりが見えてきたので、夕暮れに気づいても作業を続ける。
しばらくして時間を確認するためにスマホを見ると、午後六時を過ぎていた。
光圀さんから三十分前に届いたメッセージの通知もあったので、ポンと画面をタップする。