因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「俺も持ってはいるが、うっとうしくて苦手でね。今日も家に置いたままだ」
「ええっ!? 珍しいですね。私はむしろ、いつも持ち歩いていないと不安です」
今どき、スマホを携帯しない大人がいるとは……。仕事で必要にならないのかな?
あからさまに驚く私の反応を見て、光圀さんが確かめるように聞く。
「ということは、扱う技術にも長けていそうだな」
「長けているかどうかはわかりませんが……電話、SNS、写真や動画の撮影、ネットでの調べものくらいならできます」
「それだけできれば免許皆伝だ」
感心したように褒めてくれるが、あたり前のことなので特にうれしくはない。
というか、なんだかさっきから、光圀さんが実年齢よりおじいちゃんに見えるような。
『スマートホンはどうにも苦手でのう』
そう言って私に教えを乞う、白髪頭の光圀さんが頭に浮かんだ。光圀さんならきっと、おじいちゃんになっても渋いイケメンである。
「今まで、仕事の連絡は弟子に任せていたから不便はなかった。しかし、妻と連絡を取るのに弟子を介するのも変な話だろう。時々でいいから教えてくれないか? スマートフォンの使い方」
失礼な妄想をしていたせいで、思わず笑いがこぼれた。光圀さんは凛々しい眉を中央に寄せ、怪訝そうに私を見ている。