因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

 もしかして、閉じ込められた……?

 太助くんは、蔵の中にいる。ということは、今扉を閉めて鍵をかけたのは誰?

「家でひとりにならないほうが身のためだと、忠告しましたよね」

 蔵の照明は、裸電球が天井の梁からいくつかぶら下がっているだけ。

 その頼りない明かりの中、太助くんがゆっくりこちらに近づいてくる。

 無意識に後ずさると、すぐに背中が書架にぶつかった。それでもなお、太助くんはじりじりと距離を詰めてくる。

「太助くん……?」
「やっぱり怯えてるじゃないですか。野良犬に同情する気持ちはあっても、実際自分が噛み付かれそうになったら嫌なんですよね。口ではわかった風なことを言ったって、あなたも結局先生みたいな血統書付きの男がいいんだ。……心底がっかりです」

 真っ暗に濁った太助くんの瞳が、私を捉える。そして無理やり私の手首を掴むと、書架に押しつけた。

 強い力で握られた手首が痛くて、涙が浮かんでくる。

「お願い、やめて……」

 必死に懇願すると、太助くんが一瞬ひるんだように瞳を揺らした。

 まだ、彼は正気を失ってはいない。話ができるかもしれない。

 私は抵抗するのをやめ、恐怖を押し隠して彼に問いかけた。

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