因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「光圀さんに、少しの恩も感じていないというの……?」
「恩? 生まれた時からなにもかも手にしていて、ちっぽけな木片の香りを嗅いで遊んでいるボンボンに、なにを感謝しろって言うんですか?」
光圀さんを馬鹿にされたその刹那、カッと頭に血が上った。
それから自分でも驚くほどの馬鹿力で彼の手を振りほどき、怒りにまかせて叫ぶ。
「光圀さんがしていることは遊びなんかじゃない……っ! どうして彼の努力がわからないの? たとえ動機は不純だったとしても、弟子として長い間一緒に過ごしてきたんでしょう? それなのに、どうして……っ」
あふれ出る感情をぶつけながら彼に詰め寄ると、太助くんは気圧されたように一歩後ろに下がる。
肩で息をしながらそのまま彼を睨んでいると、蔵の入り口がギィ、と音を立てながら、再び開かれた。
息を切らせて駆け寄ってきたのは、伊織さんだ。
「和華さん! 大丈夫ですか!?」
「伊織さん……。はい、私はどこもなんともありません」
私が無事だと察するや否や、伊織さんは太助くんの方へ向き直る。