因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「お前の身上調査をした醍醐家の顧問弁護士も、そして俺も、お前の入門には反対した。しかし、先生だけは違ったんだ。あの時、調査書を見た先生は……お前の前科そのものより、どうして罪を犯さなければならなかったのか、お前の置かれた境遇にむしろ同情していた」
太助くんの目が、大きく見開かれる。
伊織さんはそんな彼から忌々しそうに手を放し、自分を落ち着かせるように大きく深呼吸をしてから続きを話した。
「お前にはアルコール依存の父親がいたそうだな。母親はとっくに愛想をつかして出ていき、父子家庭で育った。父親のせいで家の金はすべて、アルバイトで自分が稼いだものまで父親の酒代に消えていく。そのうち、体を壊した父親を家で介護しなければならなくなり、アルバイトすらできなくなった。援助が可能な親戚がいるという理由で、生活保護の申請も下りなかった」
伊織さんが言葉を重ねるたび、太助くんの表情が翳っていく。
私も胸が痛くてたまらなかった。彼が私と光圀さんの政略結婚を批判したり、食い逃げ犯の肩を持つようなことを言ったり……。
その理由が今、こんな形でわかるなんて。