因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
破門……。そうなったら、太助くんは醍醐流香道を二度と学べない。
彼は、そんなに重大な罪を犯しただろうか? 太助くんはギリギリ思いとどまったから、私はこうして無事だ。
途中で伊織さんが蔵に来たから目的を果たせなかっただけとも取れるけれど、その前から彼には迷いが見えた。
太助くんが最後の最後で野良犬にならずに済んだのは、光圀さんのもとで香道を学んでいたおかげだと、そう思いたい。
「あのっ」
突然声をあげた私に、伊織さんも太助くんも不思議そうな顔をする。
私なんかが口を挟んでいいことかどうかわからない。でも、光圀さんの妻として、彼の信じた香道の力を、私も信じたいから。
「私から、光圀さんにお願いしてみます。太助くんを破門にしないでくださいと」
「和華さん……それはあまりにも人が好すぎます」
「失礼を承知で言わせてもらいます。……馬鹿なんですか?」
ふたりから同時に窘められ、少し弱気になりかける。
それでも、ここは引けない。