因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「私は光圀さんを、無責任な飼い主にしたくありません。野良犬を拾ったからには最後まで面倒を見る。彼だってそのつもりでいるはずです。家族がちょっと噛まれたくらいで匙を投げるような人じゃない。私はそう信じています」
光圀さんのことを語ると自分の思っていた以上に熱が入ってしまい、言い終えてから恥ずかしくなった。
しかも、完全に太助くんを犬扱いした言い方になってしまった。
「ご、ごめん。私まで野良犬だなんて言って……」
慌てて太助くんに謝るが、とくに返答がない。
顔を上げ、怒らせてしまっただろうかと彼の表情をうかがうと、彼は大きく目を見開いて私を凝視していた。
「今、和華さんの後ろに先生が重なって見えたような……」
「お前もか太助。実は俺もだ」
ふたりが揃って目を瞬かせるので、私も思わず自分の背後を確認する。
もちろんそこには誰もおらず、整然と本が並んだ書架があるだけ。
あたり前のことを確認してから、ふとある思いが頭をよぎり、背筋がぞくりとした。