因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

 午後七時前、ホテルのパーティー会場に入り、招待客に軽く挨拶をしながら開会を待つ。

 今日のパーティーは日本文化のあらゆるジャンルに精通している、多種多様な人々が百名ほど集まっていた。

 年齢層は高いだろうと想像していたが、俺より年下の江戸切子職人や京都の老舗料亭を継いだ若い料理人などの姿も多く、いい刺激を受けられそうだった。

 パーティーということで、今日の着物は銀鼠(ぎんねず)色の御召(おめし)に、背中にひとつ紋の入った濃紺の羽織を合わせた。

 ともに最高級の西陣織で、身に着けているだけで気が引き締まる。

 室内の装飾は大正モダン風で、赤い絨毯の上にクロスのかかったアンティークの木製テーブルが点在している。

 大きな格子窓にはアクセントに青や緑の色ガラスが使われており、和華が見たら目を輝かせて喜びそうだと思った。

 ……今頃なにをしているだろう。

 この頃不穏な空気を漂わせる太助のお目付け役に伊織を置いてきたので、彼らや家政婦たちと一緒に大掃除の手伝いでもしているだろうか。いや、もう遅いので夕食か。

 給仕係からシャンパンを受け取り、ぼんやり和華を想う。

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