因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

「まぁ、まだ着替えも済ませてらっしゃらないの? 光圀さんはとっくに朝食を済ませて、香間(こうま)で座禅をしておられるのに」

 楓子さんが口元を手で隠し、まるで汚いものを見るように顔をしかめる。

 さっそく、だらしのない嫁だと思われてしまったようだ。

 光圀さんがゆっくりしていいと言うので真に受けていたけれど、この家で働く人たちにとってはそうじゃないのかもしれない。

「す、すみません! すぐに支度をします」

 慌てて頭を下げて、布団を畳む。

「……まったく、傷物の嫁なんてもらうから」

 ぼそりと、楓子さん呟いたのが聞こえた。声に反応して振り向くと、彼女は取り繕ったような笑みを浮かべる。

「着替えが済んだら〝離れ〟にいらしてくださいね。私から、醍醐家に仕える者たちを紹介しますから」
「はいっ」

 返事だけはハキハキとしたが、部屋着姿なのでなんとも格好がつかない。

 楓子さん、早く出て行ってくれないだろうか。

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