因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
贖罪でも、義務でもない一夜
光圀さんがパーティーに出かけた翌日。
夕方、彼の帰宅時間が近づくと私は門の前に出てソワソワしていた。
醍醐家のお抱え運転手が上野駅に彼を迎えに行っていて、そろそろ到着する頃なのだ。
「浮かれているところ悪いですけど、先に僕が先生に声をかけますからね」
「うん、わかってる」
私と同じように、門の前で光圀さんを待っているのは太助くん。
昨日のことを、光圀さんに直接謝るつもりなのだ。
「あっ、来た……!」
見覚えのある黒塗りの高級車が、門の前でゆっくり停車する。
運転手が後部座席のドアを開くと、光圀さんが両手に大量の荷物を提げて出てきた。
「ただいま。なにもこんな場所で待っていなくても……」
光圀さんが呆れたように苦笑したその時、太助くんが彼の前で地面に膝と両手をつき、深く頭を下げた。
「醍醐先生、申し訳ありません。僕は昨日、和華さんに乱暴な真似を働きました。長年先生の恩情にも気づかず、修行を蔑ろにし、伊織さんにも迷惑と心配をかけました。こんな僕に、先生の弟子を名乗る資格はない。……長い間、お世話になりました」
太助くんはひと息に言い切って、地面に額をつける。