因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

「和華。きみはどこで世襲制のことを知った? 誰かに聞いたのか?」
「蔵で、家訓を見たんです……。それに、楓子さんの口からも同じことを聞きました」

 ついさっき、食堂で彼女がその話をするのを聞いた時、あの家訓が本物だと証明されたようで、ショックだった。

 光圀さんの妻でいる資格が今にも奪われるような気がして、怖かった。

「……そうか。しかし、きみが見た家訓は古いものだ。世襲制は祖父の代を最後にして終わっている。俺の口から、もっと早くに伝えておくべきだったな」
「えっ……?」

 意外な言葉に、呆然とする。

 世襲制が終わっている……。あの書物は確かにとても古いものに見えたけれど、てっきり今も引き継がれている家訓なのだとばかり思っていた。

 光圀さんは私の肩を抱き寄せ、私の手を緩く握りながら語った。

「俺の祖父が愛し結婚した相手は、子どもが産めない体だった。そのために離婚を強いられ、新たに妻として迎えられた祖母は、子どもを授かることはできたが祖父に愛されなかったそうなんだ。そんな冷え切った夫婦を子どもの頃から目の当たりにしていた父が、あのしきたりを撤廃しようと決めた。……家元の妻となった女性を、こんな風に苦しめないために」

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