因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
光圀さんはそう言って、涙で濡れた私の目元に癒すようなキスを落とす。
今まで不安や悩みだらけだった胸に、穏やかな気持ちが注がれていく。
「それじゃ、光圀さんじゃない人が家元になる可能性もあったってことですか?」
「そうだ。それ知らなかった高校生の頃までは、自分が次期家元なのだと信じ込み、その立場に胡坐をかいていた時期もある。しかし、俺の目を覚まさせてくれたのは、いつも純粋に俺を応援してくれる和華だった」
彼がこうして立派な家元になれたのは彼自身の努力の賜物。
それでも、今の彼を形作る要素に私の存在が少しでも含まれていると知り、誇らしくなった。
私は彼の手ぬぐいにギュッと顔を押し付けて涙を拭うと、光圀さんの顔を覗いた。
「では、改めて……これからもおそばにいていいですか?」
「あたり前だ」
間髪入れずに答えた彼が、唇を優しく奪う。一度離れた後も、まだ足りないと訴えるように何度も何度も、やわらかな唇が重なる。
神聖な香間でこんなことをしていいのかな……?
少々疑問に思ったけれど、口に出したらキスが終わってしまう気がして、私は黙っていた。
やがて顔を離した光圀さんは、名残惜しそうな目をして、ふっと苦笑する。