因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

「あと何カ月か頑張ってみて、それでもできなければ夫婦で病院へ行こう。もしかしたら、原因は俺の方にあるのかもしれないし」
「光圀さん……」
「俺たち家族のことだ。ひとりで抱え込むな」

 そんな言葉とともに強い腕にギュッと抱き寄せられ、私は彼の胸の中で「はい」と頷いた。

 いつも通りに彼の着物からふわりと香る白檀が、迷いも不安も包み込んでくれるようだった。


 夕食に素麺を頂き、お風呂を済ませた後。光圀さんと私は浴衣で母屋の縁側に座り、星を眺めていた。

 季節柄、傍らで蚊取り線香を炷いている。昔ながらの渦巻き型だ。

「家訓のこと、楓子さんにも聞いたと言っていたな」
「はい。直接ではなく、家政婦さん達と話しているのを聞いただけですが」
「そうか。彼女は過去に俺にも間違った家訓を伝えているが、単に知らないだけなのか? いったいなにが目的で……」

 光圀さんは難しい顔をしながらブツブツと呟き、全然星を見ていない。

 私はちょっとしたいたずら心で、無防備な彼の頬にチュッと唇を押しあてた。

 光圀さんは頬をかすかに赤く染め、私を睨む。

「やられた……完全に不意を突かれた」
「ふふ、光圀さんに隙があるなんて珍しいので、つい」
「いつでも隙だらけのきみに言われたくない」

 光圀さんの両手が耳の脇の髪をかき分けて私の顔を掴み、そっと引き寄せる。

 唇にお返しのキスをされ、至近距離で絡んだ彼の視線は危うい熱を孕んでいた。

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