因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
楓子さんとの話を終えると、俺は再び和華の部屋へ戻った。
付き添いの家政婦はいなくなっていて、さきほどより幾分顔色のよくなった和華が、上体を起こして一杯の水を飲んでいた。
『和華、具合はどうだ?』
『光圀さん。さっきよりはだいぶ―――』
和華は俺を見上げて微笑もうとしてくれたが、次の瞬間口元を押さえてうずくまった。
すぐに彼女のもとにしゃがみ込み、背中をさする。
そして和華の息遣いが落ち着いてくるのを待って、静かに尋ねた。
『楓子さんに聞いたが……妊娠しているというのは本当か?』
声を出すのもつらいらしい和華は、口元を押さえたままコクッと一度頷く。
ということは、これは悪阻というものなのだろう。
話には聞いていたが、こんなに母体を消耗させるものなのか……。
代わってやれないのがもどかしく、できるだけ優しく背中をさすり続ける。
『みつ、くに、さん……』
『どうした? 吐きたいか?』
何か訴えるような目をして、とぎれとぎれに言葉を紡ぐ和華。
どんな要求でも応えてやるつもりでジッと言葉の続きを待っていると、和華は苦し気に眉根を寄せ、告げた。
『離、れて……』