因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「和華?」
「すみません、ちょっとだけ吐き気が……あの、ベッドの脇にあるハンカチを取ってもらえますか?」
「わかった。とりあえず座って」
光圀さんに優しく肩を抱かれてベッドに移動し、腰かける。
目を閉じて吐き気に耐えていると、光圀さんがサイドテーブルからハンカチを取って差し出してくれる。
「これだな?」
「ありがとうございます」
ハンカチを受け取ると、鼻から口をすっぽり覆って息を吸う。鼻腔を通り抜けるのは、爽やかな柚子の香り。
ハンカチに柚子のアロマオイルが染み込ませてあるのだ。
「柚子の香りか」
さすがは光圀さん。ハンカチを直接鼻に近づけたわけではないのに、隣に座っているだけで言い当てる。
「はい。柑橘系の香りがつわり症状を和らげてくれるって……楓子さんが教えてくれたんです」
「楓子さんが?」
光圀さんが、意外そうに目を丸くする。