因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「夕飯を食べたら、帰っちゃうんですよね……」
「なんだ、もう寂しくなったのか?」
「だって、つわりはいつ終わるかわからないし、今度いつ会えるか――」
話している途中で光圀さんの影がかかり、唇に羽根のような口づけが触れた。
光圀さんはこつんと額同士を合わせ、私に瞳をまっすぐ覗き込む。
「いつだって会いに来る。和華が望むなら」
甘い言葉に、胸がきゅんとなる。実際は無理だったとしても、光圀さんがそういう気持ちでいてくれることが嬉しい。
「お洋服を何着も買わなきゃなりませんよ?」
「それで和華の寂しい気持ちを紛らわせられるなら、安いものだ」
「じゃ、次はスーツ姿の光圀さんが見たいです」
「おおせのままに、お姫様」
今日の光圀さんは、洋服を着ているだけで中身まで西洋の王子様になっているみたい。
息のかかる距離でたわいのない話をし、クスクス笑い合っているだけで、離ればなれの日々で枯渇した心に、とくとくと栄養が注がれていく。
「そういえば、そのバッグはなんですか?」
ふと、彼が足もとに置いていた保冷バッグが気になり聞いてみた。